狛犬を訪ねて№42・福島県小野町の狛犬① ②へ ③へ

田村郡小野町・塩竈神社狛犬・昭和4年(1929年)・野田平業作・31歳作品()無断転載

狛犬を訪ねて 狛犬を訪ねてマップ 狛犬を訪ねての石工 狛犬スライド・一覧表

 狛犬を訪ねて№42・福島県小野町の狛犬①

雑草が最も猛威を振るう夏、今年は特に厳しい暑さにエアコンが効いた快適な部屋を出る事は極めて億劫です。それでも雑草が生い茂る県境の村をほったらかしにも出来ず8月29日の夜、草刈にやって来ました。高原の村も、何時もなら夜になれば涼しさが辺りに漂うのですが今年の夏は例外です。

早起きして草刈りを終わらせてから県境の村の近くの神社を回る事にしました。 小野小町生誕地の伝承が伝えられてきている福島県小野町・塩竈神社の野田平業の狛犬を訪ねながら幾つかの神社を参拝する事にしました。

8月30日、31日、共に神社を巡った後夕方の渓流のイワナ釣りに間に合うよう早めに県境の村に帰りました。2021.08.30

小野町を訪れる朝、早目に村を出て白河市の農協の直売所に開店時間に合わせて立寄りました。この買い物が極めて大きな目的になっています。値段が街の半額以下で新鮮で全ての味が極めて美味です。

今回は果物を買い込むことにしました。かなりの数の梨とリンゴのB級品が出ていたので急いで確保しました。これで今回の目的が達せられました。車に買い込んだ果物を積み込んで小野町の神社へと向かいました。2021.08.30

石川郡・東白川郡・茨城県・田村郡周辺の狛犬マップ 小野町は隣接するので№41・石川町~田村市のデータ一覧を掲載しました

狛犬を訪ねて№42(掲載部マップ・マーク)・福島県小野町の狛犬
塩竈神社小野小町生誕の地上羽出庭諏訪神社
夏井諏訪神社⇒平田村・菅松大明神

狛犬を訪ねて№41(掲載部マップ・マーク)・福島県石川町~田村市の狛犬
①・ 石川町 
八幡神社八幡宮八幡神社石川町母畑東・八幡神社⇒玉川村・千五沢都々古別神社
②・田村市 宮ノ前・宇佐神社⇒滝根町・八幡神社
③・田村市 滝根町・菅谷神社大越町・子守神社
④・田村市 大越町・見渡神社大越町・上川神社

2021.08.30

左画像のスライド(クリックするとスライドのページに移動します)と③狛犬を訪ねて・区分マップ石川郡・東白川郡の狛犬掲載一覧マップをご参照ください。2021.08.30

小野町・塩竃神社

塩竃神社住所:福島県田村郡小野町小野新町万景上 。建物が立て込んでいる小野町の中心部に鎮座する塩竈神社はグーグル・マップによる下調べでは白河市の石工・野田平業の狛犬が奉納されているようなので是非とも参拝したいと思っています。心配なのははたして町の中の神社に駐車場があるのかを案じています。ただ一つの希望は、グーグル・マップで神社の傍に”こまち交流館”という施設が見つかったのでもしかしたら町の施設なので駐車できるかもしれないと一縷の望みを持ちながら出かけてみました

カーナビに従って建物の”こまち交流館”の施設の中に車を入れて玄関から声を掛けると管理人の方が姿を見せてくれました。塩竈神社に参拝に来たが車を止めさせていただけるのかと尋ねる、どうぞとの事。小野町の他の施設でもそうでしたが、大変ご親切な方で小野町のパンフレットを手渡してくれながら小野小町生誕の地での駐車場も教えて貰いました。落ち着いた静かな街並みと、小野小町生誕の伝承地での親切な方々との出会いと言う旅の始まりでの心地良い思い出が強く印象に残りました。2021.08.30

”こまち交流館”に車を止めていると管理人の方が庭の裏の出口から鳥居に出られると教えてくれました。綺麗に管理された庭を横切り裏道に出ると確かに直ぐ神社の参道が見えました。

広い石段の参道が小山の上へと続きます。一の鳥居の前に大きな狛犬が奉納されています。一見して白河市の彫刻師・野田平業の狛犬に間違いないようです。

ひとまず周囲を回りながら平業の狛犬としてはかなりの大型の石像をざっと見てからまず神社の参拝をさせて貰う事にしました。2021.08.30

神社の境内の先には街の中心部を通るメイン・ストリートが通っています。暮らしと神域が混ざりあう心地良い佇まいが広がっていました。2021.08.30
石段は踏み代が広く傾斜が緩やかで足元を気にする必要はありませんでした。本殿に登る楽しさを味わえる心地良い参道になっています。登る程に街の佇まいが眼下に広がりだします。2021.08.30
小野町・塩竃神社参道の脇に美しい欅の巨木が真っ直ぐに空に向かって立ち上がっていました。脇には”出会いの欅(ケヤキ)”の木片が立っていました。果たして誰と出会うのか、もしかすると神社に祀られた神々かもしれません。2021.08.30
緑の森の中に鎮座する美しい社で頭を垂れて旅の無事を祈りました。2021.08.30

磐越東線に沿った町々に鎮座する神社では美しい宮彫りの木彫や社の屋根が多く見られて参拝をより楽しませてもらっています。この社の佇まいも、頭を垂れて祈る一時、心を鎮めてくれる心地良い神域に感じました。2021.08.30

奉納されている神社の扁額も、年月に晒された木部と名前が記された金色との風合いのバランスのとれた見応えのある印に感じました。2021.08.30

境内の草むらの中に赤いミズヒキの花が群生していました。コロナ・ウイルスと猛暑に身を置く日々に忘れていましたが、秋が近い事を思い起こさせてくれます。2021.08.30
小野町・塩竃神社・昭和4年(1929年)・野田平業 31歳製作の狛犬

白河の石工・野田平業のかなり大型の狛犬、右に置かれた阿像と思われる狛犬。平業の狛犬としては精緻な彫りの印象より力の漲る石像に見えます。

玉を阿像の足下に彫られた所謂玉取りの意匠ですが、平業独特の篭彫りではありません。大きな狛犬の迫力は圧倒的な存在感を辺りに漂わせて居るように感じました。2021.08.30

光線具合と、阿像に木の枝が掛かる事から吽像の後方から阿像を写しました。平業の狛犬では珍しい意匠だと思いますが、子供が足下に加えて背中にも彫り込まれています。やはり吽像からも迫力を感じます。

2021.08.30

左の吽像には2頭の子供が彫り込まれています。足元に一頭、背中からももう一頭の子供がこちらを覗き込んでいるようです。2021.08.30
台座もかなり大き目で平業の狛犬中でも石像の大きさではかなり大きな狛犬です。左後方に”こまち交流館”あります。辺りは町の中心部らしく通りに多くの商店が立ち並んでいました。2021.08.30

一部がハッキリしませんが”白河町 彫刻師 野田平業作”の文字が見られます。2021.08.30

台座に昭和4年の文字と”石工 深谷x次郎”と推定される文字が彫られていました。野田平業の狛犬でしばしば見られる石像を平業が刻み、石組や据え付け等の他の石工の人が行ったと思われます。2021.08.30
小町生誕の地

小町生誕の地:福島県田村郡小野町大字小野新町字中通2。”小野町ふるさと文化の館”の図書館や保育所などが集まる場所に広い駐車場があるのでそこに車を停めさせて貰いました。小町生誕の地はこの建物の左側にありました。この施設でも小町生誕の地の場所を尋ねると、ご親切に途中まで道案内をしてくれました。2021.08.30

湿地帯のような池の端に石碑が見えます。木橋を渡り石碑まで歩いてみました。2021.08.30

小野小町生誕の地の大きな石碑類が狭いスペースに立て並べられていました。ただそれだけですが、そうだからこそ尚この地で語り継がれてきたこの物語に身を入れる事が出来ました。そして密やかに置かれたこれらの石碑に出会ってこの伝承がまさに事実であるように思えてきました。勿論それがたとえ物語であったとしても心に残る思い出となりました。2021.08.30

小町生誕の伝承が書かれ石の説明板が置かれていました。小野町ふるさと文化の館で貰ったパンフレットと併せてその概略をまとめてみました。もしかすると理解が至らず間違っている場合もあります。

平安初期、今から約1200年程前の弘仁6年(815年)、参議・小野の岑守(おの の みねもり)は長男・小野篁(たかむら)と共にこの地に陸奥守として赴任、都の文化をひろめ殖産興業に務めました。

やがて、かって温泉の湧くこの地に館を造り暮らします。小野篁と荘園に仕える美しい娘・愛子(めずらこ)との間に愛らしい姫が生まれ比古姫と名付けられました。”比古姫”が6歳の折、小野篁(たかむら)は愛子をこの地に残し姫のみを伴い都へあがります。この”比古姫”が後の小野小町であるとの伝承がこの地で伝わっているとの事です。2021.08.30

”小野町ふるさと文化の館”で貰った小町伝説のパンフレットです。2021.08.30

小野小町生誕の地の石碑の前にはこのような池のような湿地帯が広がっていました。片隅は小さな社などがみられます。駐車場への帰路はこの中を歩いて帰りました。

静かな佇まいの中で説明板を読みながら、心に残る清々しい物語に出会った満足感に浸っています。良い思い出が出来ました。2021.08.30

田村郡小野町・上羽出庭諏訪神社
上羽出庭諏訪神社住所: 福島県田村郡小野町上羽出庭辻ノ内251。小さな流れに赤い橋が掛かる上羽出庭諏訪神社は集落の入り口道路脇に見えました。2021.08.30
車でこの橋を渡っていいものか分からないので一応橋の手前の道路脇に車を停めさせて貰いました。赤い橋の先に狛犬と鳥居が望まれます。2021.08.30

狛犬が守る参道を抜けて神社に参拝をさせて貰う事にしました。拝殿の屋根が鎮守の森の間から姿を見せてくれました。2021.08.30

諏訪神社の欅の説明文が立っていました。那須山の烈風が吹く高原の村の周辺に比べて、夏井川に沿ったこの地はかなり穏やかな印象です、多分樹木の生長にも適しているように思えます。
2021.08.30

欅の巨木が参道の脇にそそり立っていました。見上げる青空に延びる姿は、諸々の日常の雑事を一時忘れさせてくれる無言の教示です。2021.08.30

杉の巨木の先に鎮座する拝殿で心を空っぽにして参拝をさせて貰いました。緑に囲まれた境内は静寂に満ちています。参拝を済ませた後の心の様子が極めて快適です。2021.08.30

奉納されている正一(弌)位諏訪神社と刻まれた扁額、年月を経て木の色合いも自然に帰ったようです。最後に旅の無事をお願いして狛犬を見させて貰う事にしました。2021.08.30
上羽出庭諏訪神狛犬・石工 大堀末吉 常垣徳重 昭和13年(1938年)

参拝を済ませてから入り口に奉納されている狛犬を見させてもらう事にします。高めの石組の上の狛犬はほぼ通常の大きさに見えます。

玉取りの意匠の右に置かれた阿像、彩色が口から覗く事もあって力強い表情に見えました。細身に彫り込まれているので動きも感じられる狛犬の印象を受けます。

2021.08.30

左の吽像から右の阿像を写しました。後からの姿もやはり良く凹凸を付けて彫り込まれていると感じました。開放的な境内の佇まいも在ってか、個人的な印象ですが二つの狛犬の間に何か無言の通い合いがあるように感じました。2021.08.30

左に置かれた吽像は子取りの意匠です。子供と左の足との間が間隔をあけて彫られています。個人的な印象ですが、このような心遣いが筋肉質の動きのある石像と感じさせる一因かもしれないと思いました。

2021.08.30

台座には奉納した在朝鮮と書かれた氏子の方のお名前と二人の石工名が彫られていました。個人的な推定ですが、小野新町の”石工 大堀末吉”が狛犬を彫り”常垣徳重”が台座等の作業を行ったのではないかと推測しています。勿論、推測とは全く反対の二人の石工としての作業分担や共同作業も考えられます。2021.08.30

前回狛犬を訪ねて№41の折に小野町を通り過ぎて更に北へと神社を訪ねましたが、時間が無く残念ながら立ち寄る事が出来ませんでした。今回は小野町を目指して何とか出来る限りの神社を訪ねたいと思いましたが見る場所が多く目的は達成できませんでした。それは次の楽しみになるのであながち悪い事ばかりではありません。

小野町内の小町生誕の伝承の残る場所での思い出も大きく残っています。出来れば今年の冬休みにでも再度訪ねたいと思っていますが、果たしてどうなる事か。2021.08.30

10/16/2021
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№42①・小野町の狛犬   №明細
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