仕事をし寝起きをする街、そこですごす時間が今までの私の生活のほとんどでした。転機の始まりは突然訪れました。数年前中学時代の親友が広い土地と自然に惹かれてこの県境の村に移住した頃から話ははじまります。
友人も、住み始めた頃にはこの広い土地が悩みの種になるとは思っていなかったようです。共にウサギ小屋の住人であるだけに広い土地そして青空、よだれが出るほど魅惑に満ちた言葉です。ところが一夏を越すころには、そこでの生活のほとんどが住居エリアにも押し寄せてくる雑草との生活境界線を争う戦争となったのです。仕事を持つ身では戦いに供する十分な時間がありません。そして最大の弱点は地元の農家の人々の根気と技術が足りません。一時、草刈をシルバー人材センターに依頼しましたが、それも度重なると費用もかなりのものとなります。負担は面積に比例する事ですから。
それで私に話が来たわけです。土地は自由に使用してよいから庭の管理と草刈をお願いしたい。私には喉から手が出る程の申し出でした。訪れる時には、菓子折り一つです。それだけで大きな顔をして広い土地を我が物のごとく手に入れることが出来たからです。忙しい彼はすべてを私の自由にさせてくれました。小さな彼の庭の手入れと私が支配者となったそれより広めの土地の手入れ、これが菓子折り一つで手に入ったわけです。持つべきは太っ腹の親友です。
友達にしても、近所付き合いという馴染みのない苦労があります。更に、よそ者という目がどこかからうかがっているようなストレスもあるようです。葬儀には夫婦で一週間もその家の手伝いに通うという話。街の人間には分かっていなかった事が多かったと、環境の素晴らしさだけに目を奪われて移住を決めた浅はかさを悔いているようでもありました。訪れる私との話は大きな慰めになっているようです。心を開いて愚痴を聞いています。それでも大根が根を張るごとく日々にこの地に根を下ろしていく感じはしています。移住していない私にはそれらの気苦労は皆無です。申し訳ないようです。
愛用のカメラです。これで殆どの写真を三脚なしで撮影しています。ピントのぼけた写真が多いのは技量の未熟と機材の不足によります。那須山で倒してレンズを割ってしまい、これは2代目です。思い出の詰まった一代目が大変良かったので、同じカメラの現在のモデルを買いました。 |