字幕が流れる場面で映画のストーリーはほぼ事実に基づいていると知らされます。1980年代初頭、16回の脱獄と銀行強盗を繰り返したフォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)、70代半ばの極めて紳士的な振る舞いを心がける男です。
拳銃を懐にして銀行強盗を働くフォレスト、決してそれは弾丸を発射することなく二人の仲間と共に紳士的な振る舞いで金品を強奪するための脅しの道具に使用されます。その振る舞いから被害者の大きな恨みを避けながら、目立つことなく脱獄と銀行強盗を生きがいの如く繰り返します。
紳士的な振る舞いの強盗犯フォレストを追う刑事ジョン・ハント(ケイシー・アフレック)は、それが生きがいの如く晴れ晴れと犯罪を重ねるフォレストに何時しかシンパシーさえ感じ出します。
因みに、このストリーは偶然ですが、少し前に見た映画”運び屋”の中でイーストウッドが演じる輝かしい軍歴を持つ麻薬の運び屋・主人公の男・”アール・ストーン”とそれを追う ブラッドリー・クーパーが演じる麻薬捜査官”コリン・ベイツ”との出会に非常に似た話です。
フォレストは同じ時代を生きた非常に魅力的な寡婦のジュエル(シシー・スペイセク)と巡り合う事になります。紳士的なフォレストの中に密かな影を見ながらも絆を保ち続けるジュエルの姿は単なる傍観者である私にも極めて魅力的な人物に見えます。物語は登場人物のそれぞれに異なる人生を語らせて大きな膨らみを持って進行していきます。
”新作映画評論・批評”の評価を読んだ時はロバート・レッドフォードの引退がメインのそれなりの映画であろうと推測して映画館の席に座りましたが、想像以上に楽しい映画でした。ロバート・レッドフォードの真っすぐに背を伸ばして演じる老いた銀行強盗、少しの不安を持ちながらその姿に引かれるシシー・スペイセク演じる寡婦のジュエル。人生の先が見えた二人の絆は私の胸を打ちました。そしてケイシー・アフレックの何時も草臥れたような姿の刑事ジョン・ハント、それが欺く姿に見える追い詰める時の英気漲る演技にも感動しました。私の最初の推測とは違った思った以上に見応えのある大変面白い映画に出会いました。
もしこれがロバート・レッドフォードの最後の映画だとするとその姿を見られなくなることは誠に残念な事です。
2019.07.23