細い道は大木の茂る鎮守の森へとつながっていました。見上げる空は大木の葉が覆っています。私は緑の葉の中に抱かれています。植木の町の人々の信仰の場所であるらしく小さな社がありました。緑の葉が作り出す清浄な空間に感謝をこめて頭を垂れたのです。
その眼の先に湧水が流れ出していました。その水はきれいに澄んでいます。この大木で囲まれた台地が作り出した恵みです。湧水のそばに花がたむけられていました。今では宅地がすぐ近くまで押し寄せて往時の水量から比べると僅かな流れとなってしまったのでしょう。そのわずかに流れる地の恵みに感謝せずにはいられない人の気持ちが私にも共感できました。清冽な気に満ちたこの地に立ってうつうつとした心が緩やかに洗われたのです。5月の薫風がざわざわと木々の葉を鳴らして流れて行きます。
今の私には何気ない場所に何気なくある自然、まさに本物の自然にめぐり合う事ほど心安らかな事はありません。多くの自然は観光という塵芥の中に沈んでしまいました。静寂と言う自然本来の空間は、少し前には街のあちらこちらに残っていたものですが・・・