都電荒川線で王子から三ノ輪そして土手の伊勢屋へ

都電の王子駅、電車の上に見える屋根がJR京浜東北線の王子駅。その向うに飛鳥山があります。王子は王子稲荷・飛鳥山など落語や物語に出てくる場所が点在している山・坂・川の多い街です。

東京に残った唯ひとつの路面電車が三ノ輪と早稲田を結ぶこの荒川線です。往時、子供達にはチンチン電車の愛称で親しまれた乗り物です。今でもチンチンと鈴を鳴らして合図をしています。どこまで乗っても¥160です。今回、JR京浜東北線・王子駅から三ノ輪まで乗って、土手の伊勢屋で天丼を食べようと思い立ちました。この写真は都電の車庫がある荒川車庫前駅、走る電車から撮影しました。電車は緩やかなスピードで家並みをかすめて走っていきます。車窓に流れる街の暮らしが映画のシーンのように目の前を通り過ぎていきます。
線路沿いには都電のシンボルであるバラが植えられて居ます。四季咲きの花が咲いていました。 電車の中は大変きれいで快適です。三ノ輪で、東京メトロにつながるので利便性も高いようです。 駅が玄関に繋がっているようです。路地の行き止まりが駅、生活が見えるようです。 終点の三ノ輪駅、小さな駅を出ると商店街。目の前のお稲荷さんがお出迎えです。
  三ノ輪駅前の交差点、大関横丁。左は東北方面、右は上野です。明治通りは左が浅草方面になります。
関東の駅100選(どんなものかは知りませんが)に選ばれているようです。王子から乗ってきた電車は折り返して新宿区の早稲田行きとなります。白いボデイの都電に赤いバラの花は良く似合います。街の中にすっぽりと囲い込まれた三ノ輪駅、人々の生活が目の前にあるのです。長い商店街と家々を繋ぐ路地が続きます。すぐ脇は明治通りと4号国道の交差する大関横町があります。大小さまざまな車が行きかう交差点です。駅の周りだけは別天地、行き交う人々がじっくりと品定めをしています。
土手の伊勢屋

三ノ輪の先で明治通りは左にカーブしながら白髯橋へ、直進して浅草へ向かうと途中に吉原大門跡が右手に見えます。江戸時代の繁華街も今ではひっそりとしています。大門の通りをはさんだ反対側に古い店が並ぶ一角が目につきます。蕎麦屋と馬肉屋(桜肉)にはさまれた天麩羅屋が、通称”土手の伊勢屋”として界隈で知られた店です。一帯に芳ばしいごま油の匂いが漂います。昔は近所の人々が気軽に訪れる店でしたが、やはり行列の出来る店になってしまいました。余りの混雑に恐れをなして7年ほどはご無沙汰でした。今回は11時半の開店時に一番乗りで入りました。下町らしい親切な客あしらいは昔のままでした。店の方に断って写真をとらせて貰いました。

この後、有楽町で映画を見るので軽めにと思い最も安いイ・の天丼¥1,400を頼みました。海老が2匹とイカのかき揚げが入っています。揚げたてのあつあつ、ごま油が食欲を刺激します。大変美味しいなめこ汁¥200も一緒に頼みました。ハになると確かどんぶりからはみ出すほどの大きな江戸前のアナゴと海老が付いていたと思います。
店内の造作は以前と全く変わっていませんでした。古い時代のお店はこんなもんだったのではと想像する通りの落ち着いた作りです。味は人によって好みがまちまちでしょうから一概には言えません。ただ今まで何度か人を連れて行って居ますが、何時も喜ばれています。
味付けは江戸風の濃い目、油気と良く調和しています。味噌汁はだしが良く出ていて、油らっけが充満した口中を元に戻してくれます。

この直截な看板は大変リアルで興味を惹かれました。土地柄もあって、このあたりを車で通るときは寝込みに注意しなくてはいけないと聞いたことがあります。

ここがあの吉原大門跡地、向こう側に土手の伊勢屋が見えます。栄華を誇ったおいらん達を目当てに江戸の男達がくぐった大門の面影の痕跡も見つかりません。地名だけが残るばかりです。入り口に立つ見返り柳も幾度も代替わりし、ひょろっとして心細い太さです。紀伊国屋文左衛門が小判をまいたなどという話が霧のように消えてしまいました。心を通り過ぎた沢山の物語が色あせてしまったようで、大きく変わった吉原など見なければ良かったかもしれないと思いました。

 
見返り柳前の碑文。この説明がかろうじて往時の吉原の名残りを知らせてくれるものです。この柳の右側はなんとガソリン・スタンドです。通りを中に進むと現代の風俗店が立ち並んでいます。昼間のせいか人通りも少なく閑散としています。本の中で知る煌びやかな吉原を思わせるものは皆無です。入り口の吉原交番もなんとも暇な様子です。交番はさしずめ”居眠り磐音・江戸草紙”に出てくる四郎兵衛会所かと思うことで少し溜飲を下げることができました。
土手の伊勢屋で食事をした後、吉原大門で見返り柳を見て再度三ノ輪に戻りました。帰路伊勢屋の前を通ると、隣の馬肉屋さんの小売部門なのか火傷に聞くと言う効能書きを添えて馬の油¥1,100が売られていました。信州あたりでは確か馬肉を食べるようですが、東京では珍しい店です。伊勢屋に来るときは昼間が多いせいか開いているのを滅多に見たことがありません。2008.1.28
2/24/2008
本日カウント数-
昨日カウント数-
Provided: Since Oct.10,2007