安達太良山A安達太良山その@へ
地図のグリーンの点線が登山道の一部です。私のとったルートは船明神経由で安達太良に至るものです。C地点になると森林限界を抜けて岩場をあるく快適な登山道となります。足元にはあいも変わらずリンドウが咲き乱れ、目を上げればナナカマドの大きな赤い実が目に入ります。紅葉もこの辺りでは少しですが始まっているようです。標高が低い山なのに大変変化に富んだ山容を目にして、例えは悪いのですが思わず大きな拾い物をしたような幸せな気分です。グリーンの点線が登山ルートです、今回私はオレンジ色の点線を往復しました。天上の魅惑の散歩道でした。話の順に番号をふりました。2008.09.31
障子が岩を行く・C地点

@B地点を過ぎて暫く登りが続きます。途中木が生えている間は熊が怖いので大きな声を上げながら登りました。唯でさえ息が苦しい上に大きな声まで出さなくてはなりません。いたるところにナナカマドの実が実っています。勿論山道の両側にはリンドウ、リンドウ、リンドウ・・・・又リンドウ、リンドウ・・・・。果てなく続くリンドウの小道です。

上から初めて人が降りてきました、この山道で初めて出会った人です。駐車場に名古屋ナンバーの車が一台だけ止まっていたのでそれを確認したらそうだという事でした。私には簡単な絵図しかありません、挨拶して情報を得ました。その人はB地点から左『沼尻登山口』をとって硫黄川におりてから安達太良に登ってきたそうです。帰路温泉に入る都合があったので硫黄川への下り道を尋ねたら、その人は温泉の事が分からなかったようで残念がっていました。ここで道半ばと聞いてちょっとがっかりしましたが、もう登りはきつくないと言う言葉に元気が沸いてきました。

A名古屋からの登山者の人と別れて10分程で森林限界を抜け出たようです。眼前に荒々しい火山の景色が広がる360度の見晴らしです。歩く尾根の左側は沼の平に向かって障子ヶ岩の崖が続きます。安達太良はまだ見えないような気がします。尾根道には未だリンドウの群落が点々と続いています。

時としてガンコウウランと白玉の木の群落。途切れることなく表れて楽しませてくれます。

B尾根道を更に進むと中央に安達太良らしい山が見えてきました。ただ、私には正確な地図がないのでどれが安達太良山かが分かりません(後でこれが安達太良山だと分かりました)。絵図から判断して多分中央のとがった山ではないかと見当をつけました。
CC地点:展望が素晴らしい狭い尾根道を快適に進むと前方に黒々とした大きな岩場が現れてきました。上部がテーブル状になった美しい岩場です。ちなみに左奥に見えるのが安達太良山です。進むべき道は未だ残されています。

この岩場の下を右に回りこんで越えます。見た目よりは簡単です。

D岩場に近づくと手前に小さな池が現れてきてびっくりしました。天上の水舞台です。多分火山の成分のせいか水が少し青みを帯びています。驚いた事に池の周りにはリンドウの群落が点々と広がっています。このような水の中にしっかりと根を張っているのを見て驚いてしまいました。荒々しい山の姿だけでも十分感動したのに、更にこのような景色が見られるとは思っても居ませんでした。言葉もありません。冬は厚い雪の下で過ごすことになります。このような植物を目にすることは私を大いに勇気付けてくれるのです。そして同じく生きるものとしての共感を抱きます。

E大きな岩場は右側を巻いて上ります。簡単に越えることが出来ました。霧などが出て見通しが悪いと道を間違える恐れがありそうです。

岩場を登って右手を望むと前線の影響か、天気の崩れる予兆の雲が湧き出していました。

F黒い岩場を越えると沼の平が段々と下に見えるようになります。高度が上がっていることが分かります。安達太良が間違いなく近づいているようです。

G岩場を越えると360度見渡せる天上の散歩道が眼前に広がっていました。此処までの行程で出会った人はただ一人、この景色を独り占めです。これほどの贅沢など滅多にあることではありません。
H左写真の右側の小さなピークが『船明神』、真ん中の山が安達太良山です。小さな石の社がある『船明神』の先で尾根の分岐点にあたります。看板が温泉ガスの影響で錆びて消えています。どちらに進むか迷いましたがどうも人影がちらつく辺りが頂上かと思い、左に折れて沼の平の稜線に沿って鞍部まで下ってみます。矢筈の森の斜面に人が見えました。鞍部からそこを目指して登ります。
I船明神からの稜線を安達太良山頂方面から見ます。往路が左から右へ、帰りは右から左へと歩きました。磐梯山はこの雲の中です。
D地点・安達太良山頂・1700メートル
J『船明神』から鞍部を下る程に安達太良の山頂がはっきりと確認できました。頂上に人影がちらついているのが見えます。

滑りやすいこの稜線を鞍部まで下って、安達太良頂上から左に伸びる稜線に再度登ります。

K鞍部から一登りで安達太良山の頂上に通じる尾根に出たようです。右が安達太良山頂上への登り、左は鉄山方面になります。私は手前の斜面を登ってこの稜線上に出ました。歩く足元の左側には沼の平の荒涼とした景色が広がっています。

稜線上に3人の人が居たので情報を得ようと帰路について尋ねてみました。どうも鉄山を経て『沼尻登山口』から硫黄川に下る道は火山性ガスが危険だと言うのです。頂上の人を含めて全ての人が此処から左に向かう鉄山の道に向かったようです。帰路も誰とも出会わない贅沢な時間を楽しむ事が出来ました。

L午前10時に駐車場を出て、1時半に安達太良の頂上に到着しました。平日なのに10人ほどの人々が風を避けて昼食中です。私も頂上の岩陰で握り飯とゆで卵、柿を食しました。台風の影響か稜線に雲がぶつかっています、風も少し強いようです。安達太良の頂上には小さな社が建っていました。頭を垂れて祈りました。

M頂上付近で会った人の忠告を入れて今回は登った道を引き返すことにしました。秋の日暮れはあっという間にやってきます。ここで持ってきた最後の梨を食べました。甘い梨の水分が胃袋でエネルギー生み出しているような気がしました。岩場の端には名も知らぬ鳥が人を恐れる様子も無く居ます。 NB地点まで戻りましたが、とても下って登ってでは秋の日が暮れそうです。今回は源泉での入浴を諦めて帰路を急ぎます。
O快適な天上の散歩道が終わり、林の中へと分け入る前に下ってきた山道を振り返りました。紅葉と緑が程よく混ざり合っています。道端のリンドウの紫色が鮮やかに私の目を射ます。あと10日遅ければ全山紅葉だったのになどと、贅沢を言ってはきりがありません。

程よい自然の変化はかえって私に大きな余韻を残してくれたようです。全山真っ赤は確かに刺激的です、ただこれほどのしみじみとした寂寥感、季節が変わる・一年が過ぎるという、が残るであろうかと思いました。日暮れが近い山道に名残を残しながら林の道へと踏み込みました。

P『白糸の滝』まで戻ってきました。夕暮れが近いのか空気が冷たくなってきました。『白糸の滝』を撮影して林の中の道を下ります。滝の音が時々耳を捉えます。

沼尻温泉の源泉に入るという初めの目的は達せられませんでした。それでも、安達太良山への道程の景色と植物はそれにもまして私に幸せな旅を与えてくれました。標高が僅か1700メートルなのに、変化に富んだ山容は疲労おも帳消しにしてしまいます。天上の散歩を心行くまで堪能した一日でした。

10/5/2008

本日カウント数-
昨日カウント数-
Copyright (C) Oct. 10,2007 Oozora.All Right Reserved.