雪の降り積もる2月に下見をして楽しみにその時を待っていた置賜桜回廊。4月21日,雨の中を回った置賜桜回廊は残念ながら満開には数日早かったようで殆どが開花したばかり、それで急遽22日は福島県の三春に向かいました。街からの行程約862キロの花を見る春の旅でした。

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山形県置賜桜回廊古代桜から三春・滝桜 その②その①へ ③へ 冬の置賜桜回廊

推定樹齢1200年の久保桜を始めとした古代桜が約30キロの間に見られる山形置賜桜回廊を見て、福島県三春の滝桜まで、これほど贅沢な桜の道は滅多にないと思います。

多くが(全てではありませんが)塀に囲まれた寺社の境内ではなく野にある桜である事も私の心を引きつけます。土地の人々のささやかな手助け以外頼りもせず、自らで生命を維持してきた清々しい桜の美しさを感じるのです。この辺りの冬は雪が1メートル又はそれ以上積もるでしょう、それを自らの力だけで数百年も乗り越えてきた花の潔さが私に感動を与えてくれるのです。そして多くでささやかな商業主義が見られますが、どこでも親切心が先に出てきてしまう土地の人々との交流と言う点で、それはとても楽しい事でした(滝桜はちょっと別ですが)。撮影日2014.02.24

原の枝垂れ桜

千利庵で蕎麦を堪能、その余韻を楽しみながら近くの原の枝垂れ桜を目指します。推定樹齢500年と言われているエドヒガンの枝垂れ桜です。287号バイパスの旧道と思われる道路を南に走るとすぐ旗と標識が出てきます。左に折れると公民館と思われる場所に駐車場がの標識、6~7台は止められそうです。公民館は無人でしたがトイレを御利用下さいと言う丁寧な看板が出ていました。ここから見上げると小山の上に桜が見えます。

それを目指して2~3分歩いて人家の間の細道に入ると集会場のような建物があります。その山の斜面に真っ赤なお稲荷様の鳥居と桜の巨木が雨空に突き立っていました。白鷹町の説明には樹高28m、幹の径5mと書かれています。残念ながらまだ花芽は開いていませんでした。雨が激しく、カメラを上に向けるのでレンズに滴が垂れてしまいます。撮影日2014.04.21

この桜の由来が書かれた看板を読んでみました。この地の人々の暮らしぶりと桜の物語は大変興味深い物語です。花が見られなかったのは残念でしたが、このような物語を持つ桜に出会えた幸運を感謝しました。雨空の中に黒々と立っている姿は孤高の巨人の趣です。撮影日2014.04.21
お稲荷さんが祀られているのであろう山の上には新しい桜が満開です。。多分ソメイヨシノだと思われますが、このエドヒガン程の寿命は望めないかもしれませんが、私達の残された時間より遥か未来まで春になれば花を咲かせる事でしょう。撮影日2014.04.21
殿入り桜  

次にこの道路沿いにある殿入り桜を目指します。旗と標識があるので進む道さえ間違わなければ見逃すことはありません。狭い路地に何とか車を入れると3台程車を止めるスペースがありました。眼前の小山の斜面に枝を一杯に広げた桜の巨木。推定樹齢680年と言われる殿入りエドヒガン桜は満開でした。初めて古代桜の満開の姿を見ました。古代桜の中では比較的若木のせいか樹勢が強いようで花がびっしりと付いていました。白鷹町の説明には樹高16m、幹の径6.6mと書かれています。始めて見る満開の置賜の桜に感激、斜面を何度も見上げます。辺りには沢山の桜が植えられていて夜にはライト・アップもされるようです。絶景坂と書かれた標識を見つけてその緩やかな坂を上って見ました。殿入り桜の裏手を回って小山の頂上に至ります。まさに桜の絶景です。眼下には春が一面に広がっていました。山並みの雪を見てからは桜を見る事を諦めていたので、この桜の景色は私にとって格別の喜びです。撮影日2014.04.21

真ん中の木が殿入り桜です。傘をさして写真を撮るのですがどうしても雨があたり雨粒がレンズに写ってしまいました。
雨は降り続き止む事はありません。暗い気分を吹き飛ばしてくれる桜であふれかえった景色です。見る人が誰一人居ないのは勿体ない程の贅沢です。静かにこの景色を、そして殿入り桜の物語を思い出しながら坂を登り下ります。
 
この説明から類推すると1829年には既にかなりの古木であったと思われます。この殿入り桜は小山の斜面にあって対面は見上げるようになります。枝を張り空を桜色に染めています。撮影日2014.04.21
八乙女種蒔桜

次に殿入り桜から北上して八乙女桜にやってきました。旗に導かれて小山の道を進むと公民館のような建物の前に無料の駐車場がありました。車を止めて左側の山の斜面を登ります。

樹齢推定500年のエドヒガン、樹高約30m、幹の太さが4.45mと白鷹町の説明には書かれています。八幡太郎義家の伝承が残る八乙女神社の境内にそそり立っている桜は未だ花芽が開きだしただけでした。誰もいない雨の降る薄暗い社の林の中は春の桜の雰囲気はありません。相変わらずカメラを上に向けて傘の中から写真を撮るのですが滴がレンズに掛ります。 撮影日2014.04.21

称名寺阿弥陀堂の桜

 

旗と看板で称名寺の駐車場に辿りつきました。境内まで歩いて登って推定樹齢約350年のエドヒガンザクラを探しますが見当たりません。
駐車場から歩いて橋を渡りました。清流が流れる川岸に桜並木が続きます。高い木立のあたりが称名寺です。誰一人訪れる人がいません、静かな春景色です。雨は降り止む事はありません。

それならと駐車場まで戻って橋の上から辺りを見まわしますが大きな桜は見えません。念の為駐車場の前のお堂に行きますが阿弥陀堂ではなく弁天堂でした。写真が弁天堂です。撮影日2014.04.21

雨のせいか夕暮れが早く訪れるような印象です。今夜泊まる赤湯温泉までは1時間以上掛るようです。諦めて車で来た道を戻り橋を渡ります、何と橋から100m程でお墓が出てきます。そこに阿弥陀堂の桜の看板。お墓に囲まれた墓守桜でした。八分咲き程度、濃い花弁を開かせていました。レンズに雨が掛り写真が上手く撮れませんでした。撮影日2014.04.21
些少なお賽銭を上げて感謝を申し述べました。お堂の回廊を回りながら桜を眺めました。時間にせかされるように赤坂の薬師桜に向かいます。
赤坂の薬師桜



旗を目印に探しながらやってきました。20台程停められる大きな無料駐車場がありました。車を止めて案内板に従って山の方に進みます。

かなり風格のある幹が奇妙な形になっていましたが工場火災に被災したと知って感動してしまいました。桜は逆光になって良く見えませんでしたが、三分咲き程度でしょうか。雨の中傘を差しての撮影なので雨がレンズに掛ってしまい上手く撮れません。撮影日2014.04.21

白鷹町の案内によれば、推定樹 齢は約 970年にもなるそうです。樹高が約9m、幹の直径がやく6mのエドヒガン桜です。看板に書かれた物語を読んでこの桜を見上げます。風雪に耐えて自らの力で生きて来たこの桜に心からの共感と賛辞を送りたくなります。かなり幹が小さく見えたのは昭和初期の工場火災の延焼によると言うのを読んで心が痛みました。撮影日2014.04.21

白鷹町観光協会の説明によると元禄の頃江戸に出て芭蕉俳諧を学んだ無路庵東潮の句碑があると記載されているのはこの石塔群のどれかでしょう。山口奨学の桜に向かいます。撮影日2014.04.21
山口奨学の桜   

樹齢100年ほどの若木で樹勢が強いようです。残念ながら三分咲き程度。ライト・アップの用意もされているので満開にはもう少しのようです。公民館に無料の駐車場がありました。誰も見ている人は居ませんでした。あたりに遮るものがないので満開の時は素晴らしい景色になる事でしょう。撮影日2014.04.21

この桜の物語も大変興味深いものがあります。地元の人々と共にある桜に出会い感動は更に深くなりました。眼前に花を付けた桜を見ながら、この桜の物語を重ねます、映画のような場面が浮かんできました。春を華やかに彩り人々に今年こそはと言う希望を与える桜は、このようにして人々に植えられてきたのかもしれません。この地で見る古代桜と人々との永い係り合いは大変羨ましい事に思えてきます。撮影日2014.04.21
十二の桜

遮るもののない場所に桜がひっそりと立っているだけ、見ている人は誰も居ませんでした。このような贅沢は未だ満開に間がある為の好運です。花が見られなかった不運を補って余りある桜との濃密な対話が出来ました。この桜も満開になったらさぞ美しい事だろうと想像できます。雨は降り止みません、傘が邪魔でカメラの操作がままなりません。おまけに上を向けたカメラに雨がレンズを濡らすのです。撮影日2014.04.21

気分の良い広場に咲いている桜をゆっくりと堪能しました。暗くなる前に赤湯温泉に着きたいので子守り堂の桜は諦める事にしました。多分桜が咲いて居ないであろうと思われる事もあります、更にもしかしたら機会があれば再度訪れたいとも思っているのです。それ程この地の古代桜と人々との物語に魅かれました。人々のささやかな助けだけを頼りにまさに風雪に耐えた野の桜達、その姿と物語は忘れがたく私の心に残りました。
十二の桜の脇に立つ説明板です。置賜桜回廊の多くの古代桜達もこれに似た物語を持っています。最も詳細な説明板でしたので掲載しました。

置賜桜回廊の度はこれで終わりになりました。後一週間後ならさぞ美しい桜に出会えたと残念な気持ちもありますが、その分観光バスはまだ少なく静かに数百年を生きた桜と対面しその物語を反芻する事が出来た事も事実です。極めて深い思い出を残してくれた桜たちでした。ただ花見をするだけでは勿体ないような姿です。

可能ならば再度訪れたいと念じて夕暮れの迫る道を南陽市の赤湯温泉に向かいます。撮影日2014.04.21

南陽市・赤湯温泉・丹泉ホテル
未だ少し明るさが残るうちに赤湯温泉に着きました。古い温泉街でらしく狭い土地にびっしりと旅館が並んでいます。私には懐かしくもあり好ましくもありました。ホテルの設備は普通より上ですが豪華と言う程ではありません。料理は板前さんの腕が大変良いのか吟味されていました。安い特別料金では申し訳ない夕食でした。それも部屋まで運んでくれるので恐縮してしまいました。

早速ホテルの温泉に入ります。露天風呂もありそれ程大きくはありませんが十分でした。古い温泉街なので広いホテルを建てることは難しようでみんな中規模程度の作りです。温泉が豊富らしく部屋の洗面台からも温泉が出てきます。温泉に入り夕食を堪能します。下駄で見物が出来る街の中にある温泉街、そしてあちこちの路地に情緒があるのは旅の大きな楽しみです。

ホテルでくれた温泉手形の赤湯の由来に、1093年八幡太郎義家の弟の義綱が傷ついた武士を温泉に入れるとたちまち傷が治り、傷から出た血で温泉が真っ赤に染まったことから赤湯と言われるようになったとありました。置賜桜回廊でも八幡太郎義家の伝承が幾度か見られる事も合わせると義家はこの地方の物語の重要な登場人物のように思えます。

私は共同浴場の券を貰って下駄をはいて出かけました。寂しげな温泉街は雨で人通りはありません。公衆浴場は直ぐ近くでした。温泉旅館と普通の家、商店などが混然と一緒にあります。昭和を感じる温泉街に心が和みます。立派な蔵の有る家の前を通り赤湯元湯という温泉浴場に入りました。何と言う事も無いのですが地元の人の暮らしの一端に触れるのが私の旅の楽しみの一つなのです。

ホテルのすぐ前が桜の景色で有名な烏帽子山公園です。私の趣味としては物語のない公園の桜は余り好みませんが、赤湯温泉のレトロな雰囲気が気にいった事でもあり、せっかくなので夜桜を見に行く事にしました。朝五時起きして村を出たので家人は蒲団の中で寝てしまいました。傘を差し、カメラを持って出かけます。湯の坂口の石段を登ると下に赤湯温泉の夜景が広がっています。撮影日2014.04.21 

 

烏帽子山八幡宮が祀られている小山一帯に桜が植えられているようです。ライトは沢山は付いていませんが大きな桜の木の周辺に所々明かりがあたっていました。

様子が分からず雨の夜空に向けてカメラのシャッターを切ります。幻想的な風景が続きます。撮影日2014.04.21 

桜の花の下に入りました。やはり訳も無く気分がウキウキしてきます。置賜桜回廊のどこか重々しい桜の木々とはまた違った趣の桜見物です。撮影日2014.04.21 
継ぎ目なしの石の鳥居では日本最大と言うものだそうです。枝垂れ桜に覆われていました。水滴がレンズに掛ります。丸い白点は月ではなく水滴です。撮影日2014.04.21 
烏帽子山八幡宮の本殿に着きました。水滴を避けて左手で傘を支え片手でカメラを操作したのでぶれてしまいました。撮影日2014.04.21 
華やかで幻想的な夜景が続きます。数人の宿泊客が浴衣と下駄でやってきましたが一人が雨の石段で滑って転んでいました。私も危ないと思ってきたので靴で来たのです。撮影日2014.04.21 

暫く広い境内の桜と温泉街の夜景を見て帰路に着きます。石の鳥居をくぐり左に折れて寺坂口に降りる事にします。

左折すると途端に暗くなって道が見えなくなりましたが靴を履いてきたので安全です。長い一日が終わりました。明日は高畠町に立ち寄り滝桜を目指します。撮影日2014.04.21 

置賜桜回廊から三春の滝桜 ①へ ③へ

04/17/2021
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