陸羽街道を芦野に戻ります。雨がかなり強く振り出してきました。芭蕉の奥の細道縁の「遊行柳」に向かいます。一部水が張られた田の中に出島になったような地にたつ遊行柳の若葉と薄桃色の桜のコントラストに目を奪われます。景色は雨の中に煙っています。小雨の中、薄緑の柳の若葉と桜の組み合わせ、そして芭蕉の紀行文が重なります。感動が更に大きな感動を呼びます。何代も植え継がれてきた遊行柳もかなり幹が太くなっています。
芭蕉が旅の案内をしてくれます。何とも贅沢な旅です。リズムを刻む奥の細道の文章が旅愁を一層深めてくれます。
又、清水ながるゝの柳(西行が歌に詠んだ)は蘆野(那須町のあしの)の里にありて田の畔(くろ・あぜ)に残る。此所の郡守戸部某の、此柳見せばやなど、おりおりにの給ひきこえ給ふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日此柳のかげにこそ立寄侍(たちよりはべり)つれ。
田一枚植て立去る柳かな
行き会ったのはたった一人だけです。雨が時折強く降ります。入れ替わりに田んぼの中の道を遊行柳に向かいます。芭蕉の足跡を辿る何度目かの旅です。温泉神社まで進み頭を垂れて桜への感謝と家族の幸運を願いました。眼前の国道294号線はひっきりなしに車が通ります。出島となったここは別世界、静寂が辺りを包んでいます。柳の新緑と桃色の桜が共鳴して感動が私たちの胸を満たしてくれます。車を止めた道の駅と思われ施設は休みのようです。たとえ開いていても極めてささやかな喧騒に思います。
芭蕉の後を辿り「境の明神」を目指します。桜の道を北上するのです。