蛍とホタルブクロそのJ・イワナ釣り
イワナ釣りが終わり、車まで歩いてきました。夜になればあたりは漆黒の闇の世界です。車を留めた田圃の中は蛍光色に輝くホタルが舞っていました。耳がじんとする様な静寂と、動くことがままならない漆黒、見ているものは私一人です。ホタルは低く高く、近く遠く思いのままの舞を見せてくれます。村のホタルは清らかな野生児です、人間の助けも借りず自然のサイクルに従ってただ舞いながら光を放っています。私は真っ暗な中に立ちすくんで見とれてしまいました。2008.07.08

左はホタルの動画です。見られない場合はお手数ながら無料のクイックタイム・ムービーをダウンロードの上ご高覧下さい。

村の人々は綺麗だとは言いますが、たいしてみる事もないようです。それが私には素晴らしい事に思えます。大騒ぎせずに淡々と毎年の季節の訪れとして、目の端に留めて生活を送っている様子が良いなと思いました。村の人々にとってはホタルが季節になって飛ぶことは当たり前のことなのです。

勝手に厳しい自然を生き抜いて、一生に一度の幾晩かの競演を共に自然の中に生きる仲間として見ているような気がしました。ここではホタルが居ることが普通なのです。私も静かにホタル達と漆黒の闇の中に溶け込みました。感動を胸にしまい込んで。

ホタルは車の周りにも飛んできます。数匹が止まったので手で捕まえて2匹だけ持ち帰りました。村の家までの道中、車の中で光の点滅が止まる事はありませんでした。
それで庭のホタルブクロに入れてみたのです。ホタルを入れたホタルブクロを草の上に立てて見ました。何事もなかったかのように二匹のホタルは白いホタルブクロの籠の中で互いに光の共鳴をしているようでした。村でホタルが見られるのは少し遅れて7月の終わりごろになります。

驚くことに翌晩、この二匹のホタルは逃げもしないでサツキの林の中で光っていました。多分村のホタル達が光りだす頃までは元気に新しい土地で生きていると思いました。”なんとかホタル祭り”の見世物(望んで見世物になりたいホタルはいないでしょうが)にはない、自らで生きている生き物の清らかな光です。人の目に晒されてない清冽な美しさに感動したと同時に、厳しい環境を自らの力だけで生き抜いた小さな生き物の彼等に敬意を払いたい気持がわいてきました。

ホタルブクロにホタルを入れる
ここがホタルが飛び交う山側の田圃です。これを挟んだ川側(右になります)の田圃一帯も一緒に共鳴して光を放っています。流れる水は豊かです。更に帰路、川をのぞいて見ました。山の斜面に沿って光の帯が揺れていました。 密かに訪れ、密かに去っていく年中行事は今が盛りなのでしょう。誰一人見る人も居ない光の帯を眺めていました。来年も元気に見に来られる事を祈りました。慣れないために、ホタルの撮影の仕方が分かりませんでした。黒と黄色のわけの分からない写真になりました。お許し下さい。
時代小説『居眠り磐音・驟雨ノ町・蛍と鈴虫』の中で虫売りを装った盗賊・新八が下見に来て、おこんと蛍をホタルブクロに入れて優雅な蛍の光を楽しむ話をしています。勿論磐音には無縁の情緒です。 それを真似て蛍を入れてみました。作中は野草の薄紫のホタルブクロですが、目立つように白の中に入れてみました。暗闇にホタルブクロの白、その中で蛍の蛍光色の光が点滅しているのです。しばし時を忘れるほどの美しさと不思議な景色です。残念ながら撮影が上手くいきませんでした。2008.07.07
8/28/2008
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