早春の薄雪
沢

 

 

3月6日、正月以来ほぼ2ヶ月ぶりに県境の村を訪れました。

あいも変わらず厳しい自然の洗礼を受けます。冬季は何時も水抜きをして熱線に電源を入れて街に戻ります。水道の電源を入れると、台所用のボイラーから水が噴き出しています。ボイラーの水路を遮断して何とか水だけは使えるようになりました。村の水道屋さんが、2~3年に一度パンクするのでそのように蛇口を追加してくれているのです。

更に風呂場に回ると洗い場の蛇口から水が噴き出しています。こちらも何とか水を止めて風呂だけは使えるようになりました。大きな打撃でくたびれてしまいました。おまけに帰宅する日に、風呂のボイラーが点火しなくなってしまいました。鍋でお湯を沸かし顔を洗う羽目になってしまいました。村の懇意の水道屋さんに電話を入れて修理を依頼したのですがこれ程のトラブルは珍しい事です。

街への帰路の東北道には春霞が流れています、まるで別天地に来た気分です。2017.03.06

街に帰る前日、日が暮れると前々日に続いて那須山から雪が降りかかります。出発の朝のクリスマスローズは雪の中に横たわっています。赤いヒイラギの葉の上にも薄雪が残っています。2017.03.08

高原の村で先陣をきって花を咲かせた薄桃色のクリスマスローズ、私は全く心配をしていません。陽が差せばすくっと茎を伸ばすことを知っているからです。

このような繰り返しこそが、だらけたところの見えない野の花のような清冽な美しさを生み出しているように思えるからです。2017.03.08

 

村での一日目の朝、前日の夜から雪が地面を覆って冬のような雪景色が広がっています。春の薄雪はアスファルトの上ではだらしなく溶け出してしまいます。最大の楽しみであるJA白河の”り菜庵”での買い物に出かけることにします。因みに、この大きなリンゴ6個(小型は8個)で¥350でした。下らないおみやげ物より喜ばれるので10個ほど買いました(尤も規格外と書かれていますが)。街の暮らしでは信じられない値段です。勿論味も大変美味です。2017.03.07

野菜の買い物の後、久しぶりに那須から須賀川の静かな社を回りました。多くは小高い丘の上にあるどこも静かな社です。参道を上りお参りを繰り返していると心が柔らかくなるような気分です。

午後4時、村に帰る頃にはまた空から雪が落ちてきました。2017.03.07

田圃はすでに真っ白です。春の気配などみじんも感じられない厳しい風景が広がっています。薄暗さが増すほどに那須山からの雪が更に積もる事でしょう。2017.03.07
案の定夜になると雪が強く降り出してきました。不思議な事ですが空は晴れています。大きな杉の森の横には宵の明星らしき星がまたたいていました。外気は凍るように鋭く尖っています。2017.03.07
月も輝いています。白い点は落ちてくる雪です。まるで月から落ちてくるように見えます。雲も少し見えます。雪は降りやみそうにありません。2017.03.07

車の上にも雪が積もっています。出発の朝、箒で雪を払ったのですが屋根の雪が固まって取れません。東北道で屋根に雪を載せて走ることになりました。

そのような乗用車は辺りにいませんでしたので少し恥ずかしいような自慢げなような気分です。2017.03.07

出発の朝の景色は一面の雪です。左の、植えたばかりのヤシオツツジに頑張れと声をかけたところです。右のクリスマスローズの畑も雪の中に埋まっています。次回の再会は爆発する高原の春のまさに始まる頃になるでしょう。2017.03.08

   
早春の恵み

薄桃色のクリスマスローズの花の脇にフキノトウが顔を出していました。沢山は出ていませんが、今年初めてのフキノトウをとって天ぷらで食べました。夜のとばりが広がる外は雪が降っています。久しぶりに、庭で取れた梅で作った梅酒を飲んで炬燵でごろ寝を決め込みました。2017.03.07

 

悲しい落ち葉焚き

最も大切にしていたヤシオ・ツツジが突然枯れてしまいました。去年の秋にほぼ気が付いていたのですが万が一の復活を願っていましたが、儚い夢を見ていました。太い枝を切っても再生の痕跡が見えません。根元を押してみるとぼきっと折れてしまいました。

野性味の強いツツジで成長が極めて緩やかです、植木屋さんの町で買った若木の時でも10年以上と言われていました。高原の冬を思わせる早春、写真の姿で訪れる私を迎えてくれた最も気に入ったツツジとの悲しいお別れです。2017.03.06

集落の人に教えてもらった高原の町の植木屋さんに出かけて2代目を買うことにしました。

このあたりはヤシオ・ツツジの本場です。未だ寒々とした枝ぶりですが厳しい高原の気候に慣れた若木です。それでも実生でほぼ20年は育てた木だとの事です。乗用車に積めないので県境の村までの配達をお願いして村に戻りました。

枯れたヤシオ・ツツジの木を地面に置いて写真を撮りました。

植木屋さんが配達に来る前に枯れた根を掘り出して大きな穴を掘りました。まるで骨を拾うような気分です。昼食をとっていると若い植木屋さんが軽トラックに2代目のヤシオ・ツツジを運んできて穴の様子を調整して向きを慎重に決めて植えてくれました。地下足袋姿の中々頼りになる植木屋さんでした。

花芽は5~6個程度ですがこの土地の生まれで、更に冷気が満ちた高原の村、きっと一代目に負けないほどの花を咲かせてくれることでしょう。2017.03.06

枯れた枝に火を付けました。暫くは煙っていたのですが枯れたヤシオツツジの枝に火が移ると火柱が上がりました。

野辺送りのような気分です。裏山に枯れ枝を取りに行く途中日陰の雪の塊から火柱を眺めています。春の訪れには暫しの時間がかかるようです。2017.03.06

ヤシオ・ツツジがの枝や掘り起こした根が勢いよく燃えています。冷たい高原の外気も燃えるヤシオツツジの熱が体を心地よく温めてくれるので気になりません。この美しい花を眺めて過ぎていった年月に思いをはせて居ます。

2017.03.06

殆どの枝が燃え尽きたようです。一塊の灰になってしまいました。

ただ燃やすだけでは可哀そうになったので、ドラム缶の中に2個のサツマイモ投げ入れて置きました。ちょうど具合の良い焼き具合の焼き芋になっていました。艶やかな花で私を楽しませてくれたヤシオツツジの最後の贈り物です。2017.03.06

短い滞在ですが、濃密な自然との触れ合いは途切れる事のない充実した時間の連続でした。ひどい仕打ちも受けますが、それは多くが私が用心さえしていれば防げたことでした。

雪の降る村から街に帰ってくると春が実感できます。暮らすには楽ですが、街にいると尖ったような高原の早春の自然がとても懐かしくなってきます。幾度かは薄雪の夜を迎えるクリスマスローズや植えたばかりのヤシオツツジはどうしている事か・・・・。再会が待ち遠しくなります。

05/06/2017
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冬枯れの村でただ一つ、ピンクのクリスマスローズが咲いていました。

そこだけが生きていて、他は枯野が広がっています。

厳しい自然の中で花を咲かせてくれた姿に感動を覚えます。冬が長い高原の村では遅い春は爆発的に一気にやってくるのです。